両岸三通の茶旅2015(23)南投 お茶だけはなく食べ物もうまい鹿谷

5月12日(火)

日本から来たお客さん

翌朝はゆっくり起きる。さすがに昨日の疲れが出ている。リビングに行くと昨日と同じように、おばあちゃんが時代劇を見ている。これは中国の清朝の話なのだろうか。台湾に時代劇があるとしたら、いつの時代のもの?日本統治時代の話になるのだろうか。日本のテレビでも時代劇が復活していると聞いたが、視聴者の高齢化、という点では日本も台湾も変わらない。

 

U君がバイクで迎えに来てくれた。今日は日本からお客さんが来るのだという。そのお客さんは女性で、しかも一人でバスに乗ってここまで来るのだとか。もう何度も来ている常連さん、それにしても茶葉の買い付けとは言え、ここまで来ると熱心な人がいるものだ。威信も彼女が毎年来るのを楽しみにしているようだ。一体どんな人が来るのだろう、興味深い。

DSCN4770m

 

神戸でスイーツのお店をやっているという彼女、元は香港スイーツに嵌ったようだが、最近は台湾に良く来るらしい。中国語は殆どできないので、U君が鹿谷に居る時をめがけて、やってくる。凛とした経営者の雰囲気が出ている。威信は盛んに冗談を飛ばし、U君はそれを面白そうに通訳している。いい漫才コンビだ。ただ茶葉の選定は真剣で、何種類もの試飲を繰り返し、昨年との違い、今年の天候などの質問をし、ノートにメモしている。当たり前だが、商売なのだから、お客さんに説明するためには当然必要な情報なのだろう。お茶会も開いているらしい。

DSCN4776m

 

昼時になり、威信が予約したレストランへ行く。小半天、という地名が面白い。新しくできたという立派な橋を渡っていく。この辺には竹林と茶畑が一杯ある。レストランは広かったが、お客は我々しかいない。貸し切り?なのか。この辺の人々は皆知り合いなので、威信が特別に開けてもらったのかもしれない。シェフの創作料理だ、と出てきた料理は実に豪華で味も優れていた。蒸した魚、イカ団子、たけのこ、など、いくらでも食べられたが、いくら食べてもなくならない。凄い量がテーブルの上に載っていた。威信がご馳走してくれた。

DSCN4779m

DSCN4784m

DSCN4785m

 

午後はまた店に戻り、お茶を飲む。というより、試飲の続きだ。彼女はこの結果で、買い付ける茶葉とその量を決めなければならない。U君の意見も参考にして、お客さんの嗜好に頭を巡らせ、1つ1つ考えていく。私なら自分が美味しいと思うものだけを買うだろうが、それでは偏るし、第一売り切ることはできない。特に女性の好みは本当に分からないので困る。

 

彼女が仕事を終えて、バスで台中に戻るというので、皆で送っていく。私も明日、このバスに乗らないといけないので、ちょうど良い機会だ。だがバスはなかなか来ない。観光バスが何台か通り過ぎていく。山の上から降りてくるのに、時間が掛かるのだろうか。時刻表は渓頭の始発の時間しか書かれていないから、そこから何分でこの停留所に来るのか全く分からない。既に通過してしまったのではないか、という疑問が頭をかすめた頃、ようやくやって来てホッとする。料金もちゃんと用意しておかないとお釣りが出ないらしい。なるほど。

 

昨日梨山に一緒に行った息子がまたやってきた。どこか行きたいところがあるのだという。U君も行きたいというので、彼の車で向かう。また橋を渡り、小半天にやってきた。だが会いたかった人は茶畑に出ており不在だった。時間をつぶす場所もなく、何とセブンイレブンで、コーヒーを買って待機することになった。台湾におけるセブンイレブンの地位は、日本の比ではない。完全に生活の一環であり、大人から子供まで、引っ切り無しにやってくる。

 

30分ほど、時間をつぶし、再度小半天へ。今度はその人は家に帰ってきており、会うことができた。この人の作るお茶は常に品評会で入賞しているという、この辺では有名な茶農家さんだった。何といっても茶葉を見極める力が半端ではない。茶葉を見て、ちょっと飲んでみると、どんなものでは分かってしまうのではないか、と思われるほどだった。U君によれば、茶園管理にも優れているという。丁寧に茶と向き合っている人、という印象が強い。

DSCN4794m

 

こんな人もいるんだな、と感心した。そして彼の作ったお茶、これはすごかった。素人の私が飲んでも『これは違う』と分かる風味と香り。この人の茶葉だけは是非欲しいと思ったが、飲ませてもらったお茶は品評会に出品中で、入賞すれば相当の値段になる物だったようだ。そんなものを分けてくれる人はいない。残念ながら、ただ飲んだだけ、何も得ずに帰る。

 

昼ご飯を食べ過ぎたので、夜は控えめに。ということで、魷魚焿を食べる。イカのとろみスープ、ビーフン入り、というところだろうか。このとろみがイカの出汁が効いていていい味であり、香菜と相俟って実にうまい。台湾にはこんな食べ物があって、何とも嬉しい。これほど食べ物に事欠かない、日本人の好みに合う場所は台湾の他にないのではないか、といつも思いながら、食べる。

DSCN4798m

 

そしてバイクで送ってもらい、U君とお別れ。今回もまた散々世話になってしまい、恐縮した。彼は既に1か月半以上、ここに滞在しており、後1週間で帰国するらしい。彼の場合、商売なので、とても楽しんでばかりはいられず、また新しい茶業のあり方を考えているので、悩みも多いが、実にいい仕事をしているといえる。彼が厳選した茶葉の人気は高く、日本でセミナーを開けば常に満員になるほど。かなり認知されてきている。頼もしい限りだ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です