両岸三通の茶旅2015(22)梨山 ジョニーとの再会

懐かしいジョニーの工場へ

そして福寿山農場を越え、ついに標高2500m、華崗に着いた。工場への道は分かっていたはずなのに、なぜか道に迷う。完全に視界が遮られるほど、霧に覆われていた。おまけにやはり今年もしとしと雨だった。工場に入ると懐かしい顔が何人も見えた。昨年4日もお世話になったので、さすがに顔なじみが多く、『久しぶり』と挨拶してくれる。こんな再会はとても嬉しい。ジョニーもやって来た。彼とは3月に東京のFoodexで会ったばかりだが、それでもこんな形で会うのは楽しい。

 

早速に新茶の試飲が始まる。いつものように鑑定杯に茶葉を入れていく。おかあさんも息子もお茶屋さんだから、試飲は慣れたもの。実はこの息子、今は独立して、中国の上海郊外、昆山でお茶屋を開いているという。この時期、茶葉の買い付けを兼ねて帰国し、台湾の各茶産地を回っているらしい。私以外は皆プロなのだ。茶葉を確認して、レンゲでにおいを嗅ぎ、味を確かめる。色々と専門的な質問が飛ぶ。ジョニーも真剣に応対している。梨山に関しては昨年よりは出来はよさそうだ。この工場の製茶能力を聞き、U君が絶句する。

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工場見学がしたいということで、皆で2階に上がり、茶葉が運び込まれている萎凋室に向かう。横には試験室もあり、簡単な農薬検査なども行っている。その設備の規模の大きさ、に皆が驚く。昨年はあまり考えなかったが、こんなに標高が高いところに、こんなに大きな工場は少なくとも梨山にはあまりないのだ。そして1階の機械も順次見ていく。紅茶専用の機械なども配備されており、その充実ぶりは目を見張るものがある。

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今年は昨年ほど連続して雨は降っていないが、それでも楽観できる状況にはない。『梨山の茶葉は梨山だ、というだけで、品質が一段高い』と言われているが、さてどうなのだろうか。また試飲が繰り返される。お母さんも真剣なまなざしで、茶葉をチェックしている。あとで彼女が言うには『ジョニー、あれはできた男だね。教育がいいんだよ、母親の教育が』と。

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今回分かったことは、ジョニーのお母さんは鹿谷の大きな茶農家の出身だったのだ。そんな繋がりもあり、鹿谷から大勢の茶師が工場の手伝いをしている。鹿谷との緊密な関係により、会社は成り立っている、とも言っている。そしてジョニーの飾らない、他人を思う優しい人柄がこの会社を支えている。兎に角お茶、茶業に関してはジョニーのお母さんが一番よく分かっているということらしい。次回はお母さんに会いに是非一度、豊原へも伺いたい。

 

ちょうど雨が止み、いい感じの山の風景が見えた。いつもこうありたいものだ。ジョニーの工場を後にして、大禹嶺の茶工場へ行く。このあたり、かなり茶畑がなくなっているという印象がある。政府が接収しているのだろうか。土砂崩れの原因を茶畑に求めているという話もある。土砂崩れが起こっていることは事実だが、果たして茶畑が関係しているのかどうか。ただ政府の保有地であれば、居住地は別として、賃貸契約の延長はできないようだ。

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もう一つの茶工場に行ったが、オーナーは戻ってきていなかった。U君は入り口で知り合いを見つけて話している。やはり鹿谷から茶師が梨山に来ている状況が良く分かる。この工場は新しく作ったようで、中は体育館のような大きな工場だった。U君はここの茶葉が気に入っていたのだが、試飲してみて、どこか違和感があるようだった。そうなると徹底的に調べる。工場の人にも聞くし、買い付けに来ていたオジサンにも確認している。分かるまで、自分が納得するまでトコトンやる姿勢が凄い。

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結局1時間待ってもオーナーは帰ってこないので、諦めて帰ろうとすると、電話が掛かってきて、是非待っていてほしいと言われて、更に小1時間待つ羽目になる。既にあたりは暗くなり始めており、ここから5時間の道のりを帰るのは大変だな、と思うのだが、こればかりは仕方がない。これが田舎の付き合いというものだろうし、買い付けという仕事は人の繋がりが重要であることは、よく分かる。何とかオーナー夫妻が戻ってくると、挨拶も早々にU君は自分の感じた疑問をぶつけていく。但しなぜかその謎に納得できる回答はなかったようだ。

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まさに昨年ジョニーと迂回した時を思い出させる暗い山道を走って行く。あのセブンイレブンの場所まで来ると、既に午後8時過ぎになっている。夕飯を食べようということになり、近くのレストランへ。ところがこの山の中、かなり寒い。暖房はおろか、風が中に入ってくる。我々が来なかったら店仕舞いしていたことだろう。見るとおでんのようなものがあるので、具材をいくつか頼み、温めてもらい食べる。インスタントラーメンまで入れるとかなりの量になってしまった。かなり体は温まったが、やはり山の気候は侮れないとつくづく思う。

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結局鹿谷に帰り着いたのは11時過ぎ。お母さんと息子は更に1時間の道のりを帰っていった。今回の梨山ツアー、私は全く茶葉を手に入れる機会がなかった。まあジョニーとも会えたし、それも私の茶旅らしくてよいかと思う。それにしても往復10時間の旅、かなり疲れてしまった。ガレージから家に入るが、リビングには誰もいなかった。熱いシャワーを浴びるとすぐにぐっすりと寝入る。

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