広東・海南大茶旅2017(4)海南島の茶

2時間ほど話した後、外へ出た。オフィスのあるビルは古く、そのすぐ脇には何やら人が集まっていた。ちょっと気になったので近づいてみると、建物の1階が簡素なレストランの様になっており、そこで大勢の人々がお茶を飲み、軽食を食べていた。陳さんが『これが海南島に昔からある老巴茶だよ』と教えてくれた。

 

老巴茶は、以前は暇なおじさん、お爺さんたちが集まり、お茶を飲んで遊んでいたと聞いていたが、今はかなり一般化し、子供も若者も集っていた。飲んでいるお茶も冷たい茶が多く、紅茶も緑茶もあった。広州の飲茶のような風格はなく、茶も食べ物も簡単ではあるが、今ではほとんどなくなってしまった庶民の茶を感じさせた。出来ればここでお茶を飲みたかったが、陳さんに促されて、離れた。

 

次に向かったのは、海口の茶市場。ここで海南紅茶、緑茶などを飲ませてもらい、その雰囲気を味わった。緑茶が美味しく感じられたのは気のせいか。さすがに外国人が来ることはあまりないようで、お客さんも含めて、興味を持たれ、色々と質問が飛んできた。日本への関心の高まりはこんな所まで来ているようだ。

 

夕食は、海南料理屋へ。何といってもここは鶏肉。肉につけるたれは自分でアレンジするのが海南流。これは初めての経験だ。鶏肉は何とも柔らかく、そして皮のプユプユして、実に美味。他の料理もどんどん口に運びたくなる。店内もかなり混んでおり、海口の有名店であることが分かる。有り難いことだ。

 

帰りに陳さんが車で、海口の夜景を見せてくれた。当たり前だが17年前とは全然違っており、橋のライトアップなどがきれいだった。ただ昔と同様それほど高い建物がないため、広々とした空間があり、安らぎが感じられる。湖南省出身の陳さんも、ここは住みやすいという。移住者も増えている。

 

8月26日(土)
茶産地へ

翌日は朝8時に陳さんが迎えに来てくれ、ホテルをチェックアウト。これから2泊3日の茶旅を始まると告げられた。陳さんも週末を潰して付き合ってくれるのだから、何とも有り難い。車は昨日来た空港方面の高速を走っていたが、いつしか山道へ入っていく。海南島に高速道路はあるが、まだ一部に過ぎない。そしてこの島の真ん中付近はそれほど高くはないものの、山岳地帯なのだと分かる。

 

出発からほぼ2時間、最初の目的地に着いた。国営烏石農場岭頭茶廠、1950年代に建設された茶工場。最盛期には大量に紅茶を生産していたが、今は農場の中の一つの工場という位置づけになっている。往時を知る人々に招き入れられ、お茶を振る舞われた。ここも兵団が開墾した場所。今でも来るのが大変なところだから、当時の苦労は並大抵のものではなかった。

 

生産が軌道に乗り、輸出が順調になると、外貨獲得のため、CTC方式が早くから採用されていった。ちょうど文革の頃ではないだろうか。ただ1990年代にはほぼその役割を終え、生産量は激減している。この数年の紅茶ブームで多少息を吹き返しているという感じだろうか。

 

工場でお昼を頂いた。どこもそうだが、農場自家製の野菜は新鮮。やはり現地で食べるのが一番美味しいのだ。地元民同士も懐かし気に、子供の頃の話を思い出していた。うちはXX師団だよ、などという言葉を聞くと、現実にここに入植し、ここで生まれた人々がいたことを実感する。

 

ここからまた山越えを行い、次の茶工場へ向かった。雨が強くなっている。山の中で突然車の調子がおかしくなっていた。原因は分からないが、ここで動けなくなってはかなり危険だと思うような山中だった。幸い車は動いたので、スピードを落とし、何とか次の目的地の街まで辿り着いた。ホッとする。だがその小さな街の修理工場では原因が特定できず、取り敢えずオイルを足すなど応急処置をした。

 

この街の外れに白沙茶廠があった。その周囲にはかなり広大な茶畑が広がっていた。ちょうど雨が上がり、手で茶葉を摘む人々が見えた。摘み手は少数民族らしい。ここも先ほどの岭頭茶廠と同じ成り立ち、同じような歴史を辿っていたが、最近は緑茶生産に力を入れ、白沙緑茶はかなり有名なブランドになっている。

 

この付近には数万年前に隕石が落下したとかで、その土壌、水質は特別だとの説明もあった。とにかく特色を出し、従業員のやる気を向上させないと生き残れない、と若い主任はつぶやいていた。ちょうど土曜日で工場には誰も出勤しておらず、彼は我々が来るので待っていてくれたわけだ。

 

今夜の宿はこの街の大きなホテルだった。川沿いにあり、夜景もきれいだ。夕飯もそこのレストランで食べた。蒸かし芋やトウモロコシが出てきて、何とも安らかな田舎の食事となった。陳さんたちは車の修理に行ったが、果たして明日の運行は大丈夫だろうか。海南島の茶畑、ワクワクの一日が終わった。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です