福建・広東 大茶旅2016(15)農業大学を訪問して

1018日(火)
農業大学訪問

翌朝は雨が強く降っていた。本日広州郊外で撮影を予定していたTさんもこの雨を見て、行くのを止めたようだ。旅は雨でもできるが、写真は雨には弱い。折角高速鉄道まで予約したのに、可愛そう。今日はIさんに紹介されたTさんと会う予定になっていたのだが、その待ち合わせ場所は華南農業大学のキャンパス内だった。

 

この学校へどうやって行くのかと聞くと『広州東駅から割と近い』というので、地下鉄に乗って東駅へ向かう。ここまで約1時間かかる。東駅と言えば、その昔、香港から広州に出張した際、何度か利用したことがある。ここから香港直通列車も出ているし、深圳行きは頻発していた。駅に早く着いたので、明日の朝、ここから直通列車で香港へ行ってみようと思い立ち、切符を購入した。

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雨は降ったままだ。駅のタクシー乗り場へ行くと結構並んでいたが、タクシーも沢山来たので楽勝だ、と待っていた。ところが私の番が来て、目的地を告げると『そこは行かない』と乗車拒否される。仕方なく後ろの車に乗り込んで大学名を伝えると『正門までしか行かない』という。Tさんから『大学は広いので、門から歩くと20分かかる』と聞いていたので、『指定のビルまで』というとやはり拒否された。すると後ろの車は私を面倒な客と見て、最初から手を振ってくる。

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この乗り場には係員がいるので、この乗車拒否を訴えたところ、彼も運転手に理由を聞いていたが、『行かないものは仕方がない』というではないか。それでは係員の仕事にならないのだが、この辺はやはり中国。怒っていても始まらない。私は勝手に工夫を凝らす。ずっと後ろに控えていたタクシーに、大学名だけ告げて何も言わずに乗り込んだ。車は出発、運転手は気さくなおじちゃんだった。

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この大学は決して近くはなかった。20分ぐらい走ってようやく正門に着く。ここで指定されたビルの名を出し、スマホの地図を見せた。だがこの地図、正直分かりづらい。というか、大学内の11つのビル名は明記されていない。仕方なくTさんに電話、彼女が色々と説明してくれたが、何と言ってもキャンパスは広く、表示は雨で見難い。ここから迷いに迷って20分ほどで何とかたどり着いた。運転手も笑っていた。これだから、タクシー運転手が大学の中に入りたがらないのも頷ける。

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Tさんは何年か前に横浜で私が行ったセミナーに来てくれていた。元々中国の人だが、日本人と結婚しており、日本にも20年住んだらしい。ある意味で日本人以上に日本らしい。その彼女が最近ご主人の転勤で広州に赴任してきて、大学で茶を学んでいるのだという。確かに中国語の問題はないし、広州はお茶を学ぶにはよい環境であろう。

 

案内されたのは許先生の研究室。彼女は雲南省茶葉研究所で長く研究していた人で、10年前に広州に来てこちらの大学で教えている。話を聞こうと思ったが、すぐに教室に案内された。そこでは驚きの光景が待っていた。女子学生6人が、茶器をきれいにセットしている。そして男子1名が司会、詩の朗読のように演技のコンセプトを読み上げる。モダンな音楽に合わせて、6人が連動した動きを見せ、茶芸のポーズをとる。これは行ってみれば、シンクロナイズドスイミングを見ているような、キレのある、素早い動き。かつ一糸乱れぬ茶淹れだった。一体これは何だろうか。

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許先生によれば、彼らは来週福州で行われる全国茶芸大会に参加するため練習しているのだという。そんな大会があるのかと驚くと、かつてこの学校では全国2位まで取ったことがある。残すは優勝のみ。かなり気合が入っており、先生からの指示も相当に細かい。単に芸を見せるだけではなく、茶もちゃんと入れなければならない茶葉は先生が雲南から取り寄せたという。これは大変なことだ。

 

『ここで上位に入ると彼女らの就職が有利になるんです』という先生の一言が突き刺さった。そうか、ここは大学なのだ。勉強や研究するのは勿論だが、最大のポイントは卒業生が如何に就職できるかなのだ。茶荘や茶芸館、お茶会社などで雇ってくれるらしい。なぜ日本にこのような総合的な茶学部が無いのかと言えば、それは明らかに『卒業しても就職先がない』からであろう。儲からないものは研究しない、仕事がないものは大学には不要なのだ。中国が羨ましい。

 

続いて許先生が、陳先生を紹介してくれた。陳先生も雲南で研究していたが、許先生と同時期にこの大学へやってきた。そしてここ3年はアメリカで客員研究員をしており、8月に戻ったばかりだという。陳先生も雲南の茶については詳しく、特に紅茶の研究には熱心で、自ら雲南の品種を植えて、紅茶を作っていた。その紅茶を実際に飲ませてもらったが、実に美味しい。このような紅茶が商品化されればたちまちヒット商品になるのではと思うのだが、どうだろうか。

 

その後雨の中、Tさんの案内で、学校内でランチを取る。本当はこのキャンパス内にある茶畑を見学する予定だったが、雨で取りやめとなる。残念。そのまま正門まで歩き、タクシーに乗る。案内したい店があるというのでついていく。雨はようやく小降りになっている。車は市内中心部へ戻っていき、一軒の茶荘を目指していた。

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