タイ中部横断の旅2018(14)奇跡的に見つかった忘れ物

このホテルをチェックアウトして、昼間の暑さを避けて、トゥクトゥクで昨日見付けたホテルに移動した。もうこれまでのようにどんなところでも歩いていく、というのは止めるべきだ。郷に入れば郷に従え、タイ人のようにしよう。新しいホテルとはとても快適で、午後は外出する気力が失せてしまった。

 

このホテル、よくよく見ると、今回の旅の最初に泊まったメーソットのホテルと姉妹店だった。姉妹店と言ってもあちらは簡易なビジネス系、こちらはちょっといいホテルなので、まさか同系列とは思われなかった。タイのホテル業界も相当に変化しているのだろう、これはその一環だろうか。

 

何気なくテレビをつけると、タイ語放送だったが、ジャカルタアジア大会を中継していた。日本の放送局なら日本の注目選手の出ている競技のみを放送するのが常だが、ここでは大いに違っていて驚く。何しろ日本対モンゴルの女子バスケット予選を生中継しているのだ。恐らくは時間調整であったのだが、これを見ている人はいるのだろうか(日本人でもこの試合を見る人はほぼいないはず)、と心配になるほど点差は開き、特筆するものは何もない。日本なら前の競技の再放送とか、これからの競技の見所などを紹介するだろうに。

 

夕方になり、またフラフラ歩き出す。ホテル近くのお寺に参拝。その後腹が減ったので、屋台で炒飯を食べる。このシンプル感がよい。暗くなった頃、ホテルの道斜め向かいに建つ、ショッピングセンター、ターミナル21を見学。まさかここにバンコックと同じものがあるとは驚きだ。売っているもの、出展者もバンコックとあまり変わらず、物価水準からすれば高いかと思うが、大勢の人が来ていた。コラートも少しずつ発展の兆しがあるということか。

 

部屋に戻ると、アジア大会、サッカー男子、タイとウズベキスタンの試合を見る。この試合こそ、タイ人注目の一戦だったが、残念ながらタイは破れてしまった。U23カテゴリーでは、今やアジアはウズベクとベトナムの二強時代の様相を呈しており、サッカー界も変化が激しい。日本も相当頑張らなければならない状況だ。

 

8月20日(月)
忘れ物を探して

翌朝はゆっくり起きて、そこそこ立派な朝ご飯を食べて、ホテルをチェックアウト。すぐ近くに旧バスターミナルから出るバンコック行バスに乗り込む。新バスターミナルまで行かなくてもよいのは便利だし、バスの本数も頻繁にある。午前10時のバスに乗り込むと、乗客はそれほど多くないが定刻出発。シートも快適で、よく眠れる。

 

最近はバスも法定速度(また自社規制速度)をしっかり守っており、スピードを出して飛ばすことはない。4時間近く乗ってアユタヤを過ぎると、ちょっと渋滞に嵌り、速度が遅くなる。結局来たバスターミナルに着いたのは5時間後。意外と疲れたな、と思いながらもバスを降り、いつものようにトイレに入り、チャドチャックまで行く路線バスに乗り込んだ。

 

バスはすぐに出発したので幸先よいと思ったが、払うべき料金を取り出そうと小銭入れを探すもズボンのポケットに見当たらない。咄嗟にヤバいと思い、バスを止めて、一人下りる。バッグの中などを探しまくるも見付からず、いよいよこれはバスの中に落としてきた、とわかる。それでもこれまでカメラを落としたことは何度かあるが、小銭入れを落としたことは一度もなかったので半信半疑。

 

ところで私は何というバス会社のバスに乗って来たのかさえ、分からない。チケットはあるが全てタイ語なのだ。仕方なくまずはバスを降りたところに行ってみたが、当然ながらもうバスの姿はなかった。その付近にバス会社のオフィスもなさそうだ。その辺の人に聞いてみても言葉が通じない。どうするんだ。

 

とにかく言葉が通じる所へ、というので、チケット売り場まで歩いていき、そこのインフォメーションで聞いてみると、3階にこのバス会社のチケット売り場があるからそこで聞け、という。そこへ行くと、ここでは何もわからない、ときっぱり言われてしまう。もう方法はない。むしろホテルの部屋に忘れてきた可能性もあるので電話してみたがやはりないという答えだった。

 

もう万事休すだ。だがなぜここまで小銭入れに拘るのか。中には数十バーツしか入っていないし、入れ物もボロボロなのだ。諦めればよいはずだったが、その中にはコロコロバッグの鍵が入っており、このままだとバッグが開けられない。これは面倒だが、定宿へ行けば何とかなることは経験済みだった。問題は日本の家の鍵。こちらをもしもう一度作るとなると、2-3週間を要し、鍵代も1万円はかかる。これを機会に奥さんから鍵を取り上げられてしまうことを一番に恐れ、必死に探した。

 

ダメもとでもう一度チケット売り場へ行くと、『1階のバス乗り場に行ったらあるかも』と言われた。バス乗り場に忘れ物があるとは思えなかったが、最後の気力を振り絞り、荷物を引き摺り、下に降りた。遠くにバスが見えた。チケットをかざしながら、忘れ物、というと、そこにいた兄さんが『こっちだ』というではないか。行ってみるとそこにバスが停まっており、その運転手が運転座席から見事に私の小銭入れを取り出した。まるで魔法にかかったように動けなくなった。

 

何度もお礼を言った。日本なら、『なんでも忘れ物センターがないんだ』などとこちらが怒るような場面かもしれないが、タイではこれは奇跡に近いのではないかと思う。同時に自分の執念にも感心した。一体どれだけの時間と労力を費やしたことだろう。それからいつものように定宿に戻り、Yさんにこの話をすると、彼も『タイでは奇跡だ』と驚いていた。

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