中国最北端を行く(10)撫遠 半年しか開かない国境

口岸見学

漠河もそうであったが、ここ撫遠にも地図というものが売っていない。元々小都市では地図は品切れ、というところは多いが、どうやらそればかりではないらしい。書店などを探し回ったが、どこにもないのである。何と書店には村上春樹の訳本はあるのだが。これは戦略上の理由かもしれない。

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撫遠は整然とした街並みに漠河とは完全に違って、ただの素朴な田舎町に見える。街中にはロシア語がかなりみられるが、ロシア人の姿はない。でもウオッカは売っていたのでN教授は大喜び。その店で聞くと『ロシア人はハバロフスクから船に乗ってくるが、今は河が凍結されており、船が来ないのでいない。ウオッカも彼らが運んでくるが、今は在庫を捌いている』とのこと。

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昼ご飯を適当に食べて、午後は口岸を見学。と言ってもホテルから河沿いにすぐ。近くには高級住宅の分譲などがあり、この辺りが夏は栄えているのだと分かる。確かに船がここに着けば便利この上ない。河沿いの道は広くて立派だ。

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勿論口岸は完全に閉鎖されていた。河が凍結して船が来ないのだから、通る人はいない。ある人曰く『この口岸は半年しか開かない世界でも珍しい場所だ』と。河に掛かっている桟橋も凍結を恐れて外されているので、一見しても良く分からない。

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凍った河では、魚釣りをする人がいる。また何か作業をしている人も見えるが、何だろうか。ホテルの部屋からも河が見え、そしてはるか向こうのロシアが見えるのだが、相変わらず何もないようだ。

 

羊腿

夜は気になっていた羊腿を食べに行く。羊腿とは読んで字のごとく、羊の腿。並んでいる羊の腿を1つ選んで、オーダー。2階の部屋へ行くと、焼肉屋のような煙を吸い込む装置の下に、羊腿をセットし、丸焼きの要領でぐるぐる回して焼く。周囲はかなり熱い。寒いここではちょうど良い。

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そして焼けてきたらナイフと串で肉を削ぎ落とし、食べる。これはアツアツで実に美味しい。4人であっという間に足を1つ食べてしまう。この料理は遊び的な要素もあり、みんなで食べると楽しい。キャンプファイアーを思い出す。

 

2月22日(土)

黒瞎子島

ここ撫遠郊外には黒瞎子島という島がある。日中にも島問題があるが、中ロにも島問題はあり、中ソ対立の60年代から解決に時間がかかった。この島問題は2005年には国境線が確定し、西半分は中国、東半分はロシアということですでに決着しているという。この島は黒龍江と烏蘇江の合流地点にあり、中国で最も早く朝日が見られる場所であるという。

 

我々は当然、その島へ行ってみようと思った。既に中国側から橋が通っているというので車で簡単に行けるらしい。それなら車でちょっと回ってみるだけでよい。だが、地元の人は反対した。それは『いまだに島には問題がある』『島に日本人が行くことに不測の事態の発生が懸念される』というものだった。

 

確かに過去にも日中関係が悪い時に、いつもは問題ない地域に張った日本人が拘束されたケースもある。今日がその日ではない、と言い切れない。しかも中国人に迷惑をかけることも出来ない。島に通じる橋の前まで行って引き返すことにした。

 

市内から黒瞎子島までは車で30分強、勿論他に殆ど車は走っていなかった。橋は既にできており、チェックポイントはあったが、誰もいなかった。これなら誰でも自由に行くことが出来る。周辺には何らかの拠点の整備が中断していた。冬は作業しないのだろう。

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掲示板を見ると『島へ行く者は登記が必要であり、費用を払ってバスに乗り、回る。自家用車又は徒歩での参観は禁止』となっていた。中国人と言えども自由には参加できないである。ましてや外国人には過敏になる。前を見ると誰もいない空間が広がっているのだが。国境との言うのは実に敏感な場所である。

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