《昔の東南アジアリゾート紀行》‐1992年 セブ

4.1992年12月 セブ

(1) 妊娠
家内が妊娠した。妊娠、出産で旅行などは無理であろうと思っていたが、良く考えて見れば彼女は長男を妊娠した際にも、安定期に私が赴任していた台北に来ていた。相談すると医者も直行便で近い所ならば良いとの話であったので、検討の結果フィリピンのセブに行くことになった。セブはこの月よりキャセイ、フィリピンエアーの共同運航で直行便が開設されていた。

(2) セブへ
キャセイのパッケージツアーには、エコノミークラス使用の他、ビジネスクラス使用のパックがある。今回は贅沢だとは思いながら、妊娠中であることを考慮してビジネスにしてみた。

実際乗ってみるとその便はフィリピンエアーの機体であった。スチワーデスも全てフィリピン人。又ビジネスクラスには我々3人の他、2人ぐらいしか乗っていない。確かに2時間半ほどのフライトで観光地にビジネスクラスで行く人はそうは居ないのかも知れない。

スチワーデスは手持ち無沙汰。3人ぐらいが長男のところに集まり、何くれと無く世話してくれる。フィリピン人は特に子供好き。長男はちやほやされていつに無くご満悦であった。(彼は1歳代から既に制服フェチ=JALキチであった?)

(3) マクタン島のホテル
空港に着くとそこはマクタン島である。今回予約したリゾートホテルはこのマクタン内にあり、便利。車に乗ると僅か10分で到着。車中からは畑と痩せた牛、掘っ立て小屋が見える等、決して豊かとはいえない。

ホテルは予想を下回るシャビーなものであった。実は翌年この島にシャングリラホテルが出来たが、この時点ではマクタン島のホテルは皆かなり年季の入った老舗リゾートホテルばかりであった。設備は古く、部屋数が少ないせいかレストランも1つしかない。ビーチも狭い。

部屋はそこそこ広いが、何と電話が無い。ルームサービスも洗濯物の引取りを頼むのも、全て自分の足でフロントへ行かなければならない。又冷蔵庫には飲み物が入っていない。これも自分で買いに行かなければならない。私が思い描いていた便利なリゾートホテルとは全く異なるものであった。正直ガッカリした。

しかし今考えてみるとこのホテルは本当の伝統的な長期滞在型リゾートホテルであったのかもしれない。そこに泊まっていた多くの西洋人は半月以上滞在していた。リゾートとは、非日常が基本。特に便利に慣れた人間には、偶にこのような環境が良いのかもしれない。

(4) ビーチ
ホテルの前に猫の額ほどのビーチがある。季節が悪いのか天気も良くなく、何となく涼しい。また海は決してきれいではない。今一つビーチリゾートが盛り上がらない。それでも長男は砂遊びが好きなのだ。ひたすら砂をいじっている。

こんな狭いビーチにも物売りのおばさんがいる。彼女らは拾い集めた貝殻で細工を作り売っている。家内は熱心に物を見て買っていた。しかし値段を聞くと結構高い。思わずそんな高いものは返して来い、等と言ってしまい喧嘩になる。今思い返すと二重に後悔する。1つは物売りのおばさんも観光客が減り生活が大変だということを考え無かったこと、2つ目は家内が一生懸命選んだものをけなした事。

おばさんの子供達もボートトリップの手伝いをするなど働いている。一度ボートに乗せてもらったが、コタキナバルのような無人島も無く、ただボートに乗っているだけで、面白くなかった。海がきれいでないこともあり、何の為に乗っているのか分からない。うちの子供の面倒を見てくれる子もいる。何だか物悲しい気分になる。フィリピンは景気が良くなく、又誘拐・強盗のイメージにより観光客が減少している。彼らは今後どうして行くのだろうか?でも、フィリピーノは皆明るい。それが救いである。

(5) 両替
しかし3日も居ると飽きてしまうのは仕方が無い。セブ市内に出る。ホテルで車をチャーターして行くしかなく、伝統的リゾートは高くつく。その費用を少しでも埋めようと、両替を市内のレートの良いところでしたいと思い、運転手に話すと連れて行ってくれた。街中の普通の家の前に車が止まる。家内と長男を車に待たせて、中に入ると何と、後ろでガチャンという音がする。鉄格子の扉を閉められてしまった。ここはフィリピンだ。背中が冷やりとした。

机におばさんが座り、ぞんざいな態度で『幾ら換えるんだ?』とフィリピン訛りの強い英語で聞いてきた。益々心配になってきた。しかし今更怯んでもしょうがない。思い切ってレート交渉を始めた。最初は英語でやっていたが、最後には何と北京語で交渉し、最初より少し良いレートで換えることが出来た。勿論財布からお金を出す時は最後の心配をしたが、杞憂に終わる。

(6) 街中
お金が入ったので、早速昼食に行く。街のレストランは安くて美味かった。新鮮な海鮮料理を思う存分食べた。ホテルの1つしかない、そして値段の高いダイニングがとてもみすぼらしく思えた。リゾートホテルに泊まるのも良し悪しだなと思う。

教会へ行く。カトリックが多いフィリピンの教会は荘厳な感じがする。道端では煩いフィリピーノがここでは静かに祈りを捧げている。教会の建物自体もかなり古いもののようで、重みを増している。

教会内で祈っているフィリピーノは皆知的な顔をしている。日本や香港に比べれば経済的には恵まれていないのかもしれないが、宗教に救いがある。日本にも、いや日本人にも宗教が必要なのではないかと、ふと思ってしまった。

(7) リゾートの鉄則4
伝統的なリゾートとは、不便を楽しむものである。

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