ペナンで老舗茶商を探す2019(2)老舗茶荘と茶藝に巡り合う

そこから更に2㎞ほど歩いて、ついに老翁茶の店舗を探し当てた。看板を見る限り、ここが1929年創業だとは分かったが、例の資料にこの茶荘の名はなかった。中に入って聞いてみると、何と元の名前が資料にあった陳烈盛だと分かり、歓喜する。やはり残っていたのだ、こういう店が。置いてある茶道具や茶缶なども古めかしく、テンションが上がる。だがオーナーは不在で詳細は分からない。午後もう一度来て、と言われたので、一度宿に戻ることにした。

 

ただ流石ここから歩いて帰るのは辛い。私はGrabなどのアプリを使わないので、タクシーを呼ぶこともできない。近くにバス停があったのでみてみると、どうやら市内にはいけるようなのでバスを待つことにした。すると華人の年配女性が英語で『どこへ行くの?』と声を掛けてくれ、一緒にバスに乗った。

 

彼女はタイ生まれの華人で、5つ以上の言語を流ちょうに話せるらしい。聞いたら80歳近いというのに非常に元気で活発だ。これも華人パワーの1つだろうか。宿の近くでバスを下ろしてもらう。料金は1.4リンギ。バスに乗る時は行き先の距離により料金が違うので、行先が言えないと乗れないことを知る。

 

場所とバスルートが分かったので、午後はバスに乗って老翁茶へ向かう。店には3代目のオーナーがいて、暖かく迎えてくれた。そしてすぐに様々な資料を出して、見せてくれる。熱心に写真を撮っていると、あげるよ、と言って、茶商公会の本までくれた。更には奥に行き、元の茶荘名である張烈盛の看板も探して見せてくれた。

 

 

ここの一族は珍しく広東省から来た客家であった。お茶は安渓茶など中国茶を多く扱っており、現在も小袋に鉄観音茶などを詰めて販売していた。実はペナンでは老舗茶荘が後2つ、リストに載っていたが、残念ながら2つとも既に廃業しており、ここが一番古い茶荘になっているとの情報も得た。

 

お店を出て、またバスに乗る。途中にコムタという場所があり、そこがバスターミナルだと分かったので、降りてみる。ある意味で町の中心はここだった。私の次の目的地は、タイのハジャイになるので、そこへ向かうバスを探すと、意外と便利で安いのだと分かり、満足して歩いて宿へ帰る。

 

その途中、ちょうど食べたかった福建緬があったので、立ち寄って食べた。福建緬も汁ありとなしの2種類あるが、私は汁なしが好きだ。アイスレモンティーを加えても、8リンギほどで食べられるので、軽食にはお手頃でよい。取り敢えず宿へ帰り、今日の成果を見ながら、休む。

 

日が暮れた後、宿の隣にある、フードコート?へ出掛けてみる。規模がかなり大きく、多くの屋台が出ていて、食べ物の種類は豊富。外国人観光客などはここで食べる人が多いのかもしれない。私はサーモングリルとライスを注文した。ちょっと和食テイストで案外イケる味だった。

 

今晩はこれで終わらない。午前中に連絡した茶芸協会の人から連絡が入り、夜9時に会いたいというのだ。しかも場所はペナン市郊外。場所が分かりにくいので、ホテルのフロントに相談したが、『表に居るタクシーに乗って行け』と非常につれない返事で困る。仕方なく、タクシースタンドに行き、住所を見せると、ちょっと高い料金を吹っ掛けられた。

 

それならばと、他へ行くそぶりを見せると、慌てて料金を下げてきた。どう見ても暇なのだが、大丈夫だろうか。車はすぐに郊外に出た。夜道はどこを走っているのかさっぱり分からないが、今はスマホ地図で追えるのが何とも有り難い。20分ぐらい走ると目的地に着いたが、そこは郊外の大型住宅地で、その住所には辿り着かない。電話して、最後は迎えに来てもらう。

 

その家は、林さんの自宅だった。夜9時に、全く面識のない人の家に突然上がり込む、これ海外では普通ならあり得ない状況だと分かっていたが、そこは茶の繋がり。ズカズカと上がり込む。部屋には沢山の急須があるのが目に入る。2階に上がると、心地のよい空間でお茶を頂く。張さんと林さん、この二人が十数年前に設立された茶芸協会の主要メンバーで、茶芸について日々研究する場所がここであるらしい。

 

珍しい、年代物のお茶が沢山出てきた。茶器はよく見ると日本の茶碗が使われていたりする。茶碗の本来の意味を考える。茶芸というのは工夫が重要であり、またおしゃれだなと思うが、私とは別世界、とも感じる。マレーシアの茶の歴史についても、色々と話が出てきて大変参考になる。やはりお茶の繋がりは初対面でも何の違和感もなく話に入れるのがよい。

 

夜も11時過ぎまで居座ってしまった。帰りは張さんの車で送ってもらった。彼らは本業を持っており、茶芸は趣味だと言い、連日遅くまで仕事をしたのち、お茶を飲むらしい。宿に付く前に、市内の茶荘の場所など、いくつか聞きながら行く。また明日は連れて行きたいところがあると言われ、その連絡を待つことになる。何の情報もなかったペナン、1日にして、これだけの進展を見せた。如何にも茶旅らしい。

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