マレーシア老舗茶荘探訪2019(1)アロースターで

《マレーシア老舗茶荘を訪ね歩く2019》  2019年8月14-25日

タイでのハリラヤ回避の旅を終えて、再びマレーシアに戻り、老舗茶荘探しの旅は続く。アロースター、イポーなど、あまり馴染みのない場所へも行き、ほぼ情報のない中、突撃探索を敢行する。果たして成果はあるのだろうか。

 

8月14日(水)
アロースターで

コミューターに乗って約1時間、冷房がかなりきつかった。窓の外はほぼ原野の風景。そしてその列車の窓が割れているところがいくつもあり、驚く。アロースターに初めて降り立つ。駅のホームから出口に行くには小さなエレベーターを待つか、階段を使って荷物を持って登るしかない。

 

駅を出ると天気も良く、街までは歩いて行けるようだったので歩き始めたが、私以外にそのような人はいなかった。しかしバスが来るでもなく、迎えのない人はどうするのだろうか。途中大きな通りに出たが横断できる場所がなく、車が行き交う中を無理に横断したら、老人に怒られてしまった。どうすればよかったのか。

 

ちょうど手頃なホテルがなく、少し高めのホテルへ行ってみると、フロントの対応がよかったので、そこに泊まることにした。そして腹が減ったのですぐに外へ出てみたが、意外と食事の場所がない。ここはマレー系が主体の街であり、華人経営の食堂を頭に描いて探してしまった結果かもしれない。何とか飯にあり着けて良かった。

 

ついでに街の散策を開始する。10分くらい歩いていくと街の中心、1912年に建造されたザヒールモスクが見える。何とも格好の良いモスクでしばし見とれる。マレーシアでも最も美しいモスク、とも言われているらしい。その付近には時計台があり、如何にもイギリス植民地の様相がある。その向こうにはアロースタータワーが見え隠れする。

 

その先で潮州会館を発見した。この街は華人色が薄いと感じられ、貴重な情報源かと思ったが、不在の札が掛かっていたので、立ち寄ることは出来なかった。福建会館などをスマホで探すも見つからない。モスクの横には広場があり、王宮博物館もあるはずだったが、すでに閉鎖されており見学することは出来なかった。

 

取り敢えず観光地を先に巡ることにして、次に向かったのは、マハティール首相の生家だった。ここは橋を渡ってちょっと郊外という雰囲気の中にあった。第4代マレーシア首相となったマハティールはここで生まれたのだ。実は初代のトゥンク・アブドゥール・ラーマン氏もこの街の出身だった。最近92歳になったマハティールが首相に返り咲き、俄かに注目を集めているようで、マレー系の見学者が多く来ていた。彼の生い立ち、人となりがわかる展示がされていたが、写真不可のため記憶に留めるしかない。あの老獪な政治家は一体どのように誕生したのか、とても興味深い。

 

フラフラ歩いていると、川沿いにある中華街に出くわした。この中に老舗茶荘があるのではないか、と歩いたが、この中華街は実にひっそりしており、お客の姿もあまり見られない。諦めかけていた頃、ついにその店、振華茶荘を奇跡的に発見した。だが雨の降りそうな午後、人影はなく、私も資料を持っていなかったので、一度宿に帰り出直すことにした。

 

雨が少し降っていた。止まないようなら明日にしようかと思った頃、なぜか降りやんだので、外へ出た。先ほどの道を舞い戻り、振華茶荘にやってきた。中に入ると4人の華人がお茶を飲んでいたが、突然の闖入者に皆が、『あんた誰?』という顔をした。私は老舗茶荘を訪ねている旨を伝えると、そのうちの一人が立ち上がった。ここのオーナー、李さんだった。

 

彼もやはり原籍は福建省安渓だった。第二次大戦前に父親がマレーシアに渡り、ペナンの栄華茶荘で働いていたらしい。その支店としてアロースターに出てきたのは戦後すぐだったという。この地はマレー系が多いため、中国茶を売るのではなく、テダレの原料である、紅茶粉の販売が主だった。

 

李さんも70歳を過ぎ、今この茶荘は近所の華人たちの集会所のようになっており、皆でお茶を飲みながら雑談していた。『誰もこの仕事を継ぐ人はいないよ。儲からないから』と呆気ない。それより華人の高齢化、子供や孫がどんどんこの街を離れてしまう方が問題らしい。勿論このような茶荘は街で唯一だが、早晩無くなってしまうのだろうか。

 

李さんたちが教えてくれたので、華人街の中にある、福建会館に行きついたが、既に用事はなかった。帰り掛けに、美味しそうな匂いに釣られた。焼きそばが実に香ばしく、思わず座って注文してしまった。ここで初めて『中国茶』とドリンクを注文すると、氷が入った(でも砂糖は入っていない)冷たい茶が登場した。しかも料金は0.7リンギで格安。これからはこのお茶を飲もう。恐らくこれは六堡茶だろう。因みに部屋に帰ると、初めてボーティーのティーバッグが置かれていた。

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