《台湾温泉巡り2002》(1)新北投

2002年8月、台湾7泊8日温泉ツアーに出かけた。正に温泉に入るためだけに貴重な休みを使った全く贅沢な旅であった。既に1年が過ぎており内容は現在のものと違う可能性があるが、伝えたかったことは台湾には色々な温泉があるということである。後は皆さん自身で確認して頂きたい。

1.2002年8月23日(金) 新北投

(1)空港から新北投まで
今月から運行を始めたドラゴンエアーの香港―台北線に乗り、台北へ。何故か座席がアップグレード、ビジネスクラスへご案内され、気分は上々。今回の旅はツイているに違いない。空港からはバスで市内へ。現在はバス数社が乱立しており、便利。しかし一番安いNT$100のバスに乗ったところ、途中で客を拾って行くタイプで時間を食う。やはり安いにはそれなりの理由あり。

台北市内に入り民権西路で降り、MRTで新北投へ。このMRTは90年代に渋滞解消の為フランスより導入されたものではあるが、試運転時に火災が発生。無人列車の上に避難場所が無く下に飛び降りしかない代物で運転開始が大幅に遅れたいわく付き。
現在は安全に運行されている。

(2)新秀閣大飯店

新北投駅に行くには北投駅で乗換えが必要であるが、30分で到着。非常に便利。NT$30。駅前は多少賑やかではあるが、少し行くと川が流れており、静かな環境となる。新北投には日本的で綺麗、豪華な温泉(例えば1998年にオープンした春天酒店)が幾つかあるが、私は敢て『新秀閣大飯店』に投宿。ここは駅から川沿いに歩いて5分ぐらいと手ごろ。空いていそうだったので、値段交渉をするとNT$1,500が1,200になった。

このホテルは設備が古く、その上値切った為かかなり劣悪な部屋に泊まることになる。室内は昼間なのに隣の建物と接近しており薄暗く、窓から隣の家が丸見えであった。あまり部屋に居る気にはなれず、直ぐに温泉に飛び出す。勿論部屋の汚いバスにも温泉が引かれているが。

そんな環境でもこのホテルに泊まるメリットは2つ。1つ目はホテル内で『青』『白』2つの泉質が楽しめること。2つ目は直ぐ傍に『瀧の湯』があること。

 

先ずは白の大浴場へ。『白』とは弱酸性単純泉で、白濁しており、肌触りが良く、疲労回復に効果がある。勿論夕方のこの時間、誰も居ない貸切状態。ゆっくりお湯に浸かり、気分爽快。いっぺんに今日の疲れが取れた(かなり単純?)。ただ大浴場とはいっても、窓も無く景色も無く、洗い場からして数人が入浴すれば満員か?台湾では昔裸を人に見せる習慣が無く、水着を着て入ったとの話もあったが、現在は基本的に日本と同じ。
(大学の時に同じ下宿の台湾人女性留学生陳さんが日本の銭湯に行き、どうしても裸になれず水着を持って入って番台のおばさんにこっぴどく怒られた話を思い出す。)

続いて青の個室風呂へ。『青』とは微量のラジウムを含む強酸性の泉質。血液循環を高める、細胞を活性化させる、などと言われており、近年注目されている。入ると体がぽかぽかしてきて、血行が極めてよくなっているのが実感できる。但し風呂が極めて狭いこと、そして何より相当熱いことから長い時間入浴することは出来ない。落ち着いてはいるならば、やはり白の湯である。

(3)瀧の湯
『瀧の湯』とは、新北投に現存する最も古い共同浴場である。1908年ごろ建てられたといわれており、その歴史はおよそ100年。瀧の湯の壁には今でも所謂『温泉マーク』が大きく描かれている。建物は純和風で瓦屋根。今にも崩れそうに見えるところに歴史が感じられる。

中に入ると流石に番台は無いが、男湯、女湯に分かれており、おじさんが無言でNT$70の湯銭を受け取る。浴室に入ると全てレトロ。直ぐそこに脱衣場。服を脱ぐスペースがあるといった感じで、石の床は水浸し。棚に脱いだ服を突っ込む。その奥に洗い場があったが、そこまで行けずに行き成り湯船に入ろうとしたところ、地元のおじさんに『体を洗ってから入れ。』と怒られる。いやあ、久しぶりの感触。子供の頃銭湯でよく爺さんに『湯をうめるな。騒ぐな。』などと小言を言われたのを思い出す。

洗い場で体を洗い再挑戦。かなり熱いが我慢すれば何とか入れる。ここも『青』湯であり、ラジウム効果か体がぽかぽか。しかもかなり強い酸性であり、顔を洗ったりは出来ないほど。ずっと入っていればかなり疲れるだろうと思う。ここは流し湯なので、夜8時に行っても湯は綺麗であった。

回りの台湾人達は湯に疲れると石の床の上にごろ寝したり、体操を始めたりと如何にもマイペース。何ともいい感じである。彼らにとっては、我々観光客の闖入がいい感じを邪魔しているのであろうが?風呂から出ると牛乳などを売っている。子供の頃銭湯の楽しみといえば風呂上りに冷たいコーヒー牛乳を飲むことであったことが俄かに蘇る。外に出るとバイクで家に帰る人、その辺で涼んで行く人など思い思いである。

(4)新北投の歴史
新北投は台湾で最も古い温泉地帯である。温泉の開発は1895年の日本の台湾占有と無関係ではない。割譲されたといっても北部一帯では未だに台湾義勇軍との戦闘が行われていた時代。一説には平田源吾と言う人が、金の採掘のために山に入り負傷。温泉の流れ込む渓流に身を浸して治療し、その後温泉宿を開いたのが始まり。昭和天皇が皇太子時代の1923年に台湾を訪問。北投を視察したことが一大ブームのきっかけとなる。

同時に軍も兵の保養施設として開発。日露戦争では傷病兵を大量に受け入れたという。第2次大戦後はベトナム戦争で傷ついた米兵なども治療したが、台湾の公娼制度によりその最盛期を迎える。1979年に公娼制度が廃止されてからは、衰退の一途を辿る。

因みに私は台北駐在中の1990年に『星の湯』(現逸屯大飯店)を訪れたことがある。付近は非常に静かで人気も無く良い雰囲気であったが、湯船は小さく2-3人しか入れない。夕食は昔気質のおばさんがすき焼きを作ってくれるが、何となく寂しい雰囲気は免れない感じであった。近年再度温泉の効用が見直され、多数の温泉が作られた。台北から近いこともあり、日帰り温泉としての復活である。家族で、カップルで、1人で、様々な人々が温泉に集まる。

(5)茶芸館
日本では『温泉に入って後は宴会』が定番であるが、台湾は健康的。北京語では温泉に入ることを『泡湯』、お茶を入れることを『泡茶』という。この2つがセットになっているケースが多い。

私はガイドブックに従い、最も雰囲気の良い茶芸館である、北投文物館にある『陶然居』を尋ねた。ホテルの前から巡回するミニバスに乗り(NT$15)、10分で到着。ホテルのある場所より100m以上は登っただろう。ところが不運にも『陶然居』は改装中であった。仕方なく辺りを見回すと『禅園』という名前が目に入る。

ここも20年前からある雰囲気の良い茶館。高台から北投及び台北方面が見渡せる。幸い客が無く、一人悦に居る。包種茶を頼み(NT$550)、8月の夏真っ盛りの中、汗をかきかき茶を飲む。これが何とも健康的で、且つ茶が美味い。飽きれば外を眺め、2時間は居ただろうか?台湾には居心地の良い場所があるものだ。

 

尚新北投には心地よい温泉、茶園が多数存在していると思われる。今回はほんの一つの例を提示したに過ぎない。今後是非又再訪し、新規開拓を行いたい。これから訪れる多くの場所で恐らく温泉に浸かり、そしてお茶を飲むことになる。これは実に幸せな休日になる予感がある。

 

 

 

1 thought on “《台湾温泉巡り2002》(1)新北投

  1.  須賀さん、指摘マンですみません。北投の方に行くMRTは問題の仏製のものではありません。問題があったのは動物園から敦化路を通り、中山国中でしたか、そこまで行く線です。大変問題があったので、路線を北側に延長する際、システムを全て入れ替えました。
     桃園空港と台北市内を結ぶ線は、今でも最安値は90元のようです。この路線の近くのホテルに泊まったので、乗ろうとしたのですが、最近の抗議活動の影響か、或は余りに安過ぎる為か分かりませんが、人によって運転していない、という人がいます。この線(大有バスの西線、1961番)は30分程度に1便と、場合によってはとても待たなくてはならないので、待って来ないと悲しいので、台北駅西側の国光バスの乗場に行って空港に行きました。これは125元でした。10年前から少し上がっているかも知れませんが、大差有りません。これだけ燃料代が上がっているのに、料金が余り変らないのは凄い。但し、窓硝子は結構汚れていました。
     台北駅の北側の再開発で「転運站」という綜合バス駅ができ、そこでの発着を見ていると、相変わらず高雄等西海岸主要都市を含めた各地に、長距離バスが出て行きます。或る会社の高雄行のバスは20分に1便、台南行は30分に1便でていました。勿論この会社の運行のみではありません。高速鉄道が出来、台鉄とバスの長距離路線はずたずたになるかと思いましたが、駄目になったのは国内の台北~高雄、台北~台南といった航空路だけでした。高速鉄道も結構安いと思いますが、台湾の旅客輸送、利益を出すのは難しそうです。。。

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