明るくなった上海旅2015(4)茶城で出会った少数民族

夜は紹興料理へ

夜はまた豫園の近くに戻る。この付近はこれまであまり来たことがなく、ちょっと興味が湧く。駅の付近は大規模な再開発がなされているが、その先には昔懐かしい上海が広がっていた。どうしてここだけ残ったのだろうか。何か利権があるのだろうか。パジャマ姿で歯を磨く女性がいたり、路上でおしゃべりに励むおばあちゃんたち、庶民生活ががそこにはあった。

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そして今晩のレストランは孔乙己酒家。北京にも3店舗あった紹興料理の店の名前なのだが、北京と同系列の店なのか、関係ないのだろうか。北京の店には実に良く通ったことを思い出す。日本人には紹興料理の味がよくあっており、また紹興酒が好きな人も実に多いので、お客が来ると重宝した。この店でもメニューには懐かしい物が並ぶ。店にはなぜか日本人店員まで居て、そして日本人客が数組いた。日本人店員を雇い、日本人の集客を目指すなんて、最近の中国でもあるんだな。さすが上海、他の都市ではなかなか成り立たない。

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今晩は、上海特派員のS先輩と、昔北京で一緒だったMさんと3人で食べた。Sさんはマスコミの超ベテランで、最初に出会ったのは15年前の北京。そして今回長老として上海に戻ってきた。Mさんも15年前の北京で一緒だったので、この2人もどこかですれ違っていたはずだ。Mさんは現在元の会社から出向し、今は畑違いの仕事をしている。既に4年ぐらい上海にいるはずだ。大ベテランのお2人に上海事情を色々と教わる。確かに最近の上海は明るいらしい。ここでも『上海だけは特別。上海は中国とは呼べないかもしれない』などと聞く。S先輩にご馳走になってしまい、申し訳ない。

 

6月1日(月)

天山茶城で出会う

翌朝も朝ごはんで起こされたが、もう食べる気はせず、また寝てしまった。疲れている、ということだろうか。ゆっくり起き上がり、ネットを繋ぐ。VPNが機能しており、特に不便は感じられない。聞く所に寄れば、上海市内でもVPNが機能する場所とそうでない場所があるということだ。何がイライラするかというと、使いたい時に繋がらない、使えると思って使うと繋がらないということ。人間、我儘といえばそれまでだが、何とも面倒な国だ。

 

今日は午前中暇なので、お茶市場へ行こうと思う。このホテルから一番近い市場は昔何度か行った中山西路にある天山茶城だろう。トボトボ歩いていく。高層ビルの裏側には、まだまだ80-90年代に建てられたと思しき、古いアパートが建っている。自分が留学した頃は、建設ラッシュだったのだろうと感慨深い。洗濯物がベランダから大きくはみ出しているのが、懐かしい。

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茶城は午前の早い時間ということもあり、お客は殆どいなかった。そして何と改修工事中。騒音が響き渡る。これではお客も来ない。店側も全くやる気が感じられない。これは出直した方がよさそうだな、と思っていると、見慣れた看板に遭遇した。深圳茶葉世界でいつも行く台湾茶の店、子揚銘茶の支店があったのだ。本当に支店なのか、名前を使っているだけなのかと、恐る恐る入っていくと、若い女性がにこやかに出迎えてくれ、『座って』と言ってお茶を淹れだした。

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自分は深圳の店によく言っていると告げると『私はあなたのことを知っている』というではないか。何と彼女は2年前まで深圳の店にいて、そこから上海に移ってきたのだという。深圳の店には若い女性が何人かいたので、私には分からなかったようだ。申し訳ない。ということで、突然旧知の人に出会い、馴染の店のようにお茶を飲み始める。こんな出会いもありがたい。

 

なぜ彼女は上海に来たのか、と聞くと『中国南部、広東の人などは上海の気候が体に合わない。桃姐(深圳の店の重鎮女性)なども1週間しかいられなかった。湖南省出身の私は耐えられたので』と面白いことを言う。彼女は湖南省と貴州省の境の山中の出身で、トン族という少数民族なのだという。上海にはトン族の人も出稼ぎに来ているが、交流はなく、早く故郷に帰りたいと言う。彼女は広東省に出稼ぎに来て、工場で働き、売店で働いているところを、偶然台湾人オーナーに出会い、お茶屋さんで働くようになった。元々お茶とは無縁。

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だが、まずは黙々と働き、お金を貯めることに専念しているようだ。地方から出てきた女性たちも、普通は上海を誉め、憧れ、ずっと上海に住みたいというらしいが、彼女は明らかに違っていた。自らの故郷について語る時の懐かしそうな遠い目、現代の中国において、少数民族の置かれている立場について、再度考える機会が与えられた。中国は本当に多様だ。

 

茶城を出て、ホテルの方へ戻る。大きな通りには不動産屋さんが並ぶ。見るともなしに物件情報を見てみると、この付近の家は100㎡で500万元程度が相場のようだ。500万元といえば、日本円で1億円。つまり億ションがずらりと並んでいることになる。今や東京で億ションが並ぶ地域は数少ないだろうが、上海中心部は至る所で億ションが繁殖している。その質が1億円に値しているかどうかは全く別として、それが実態であることを認識すべきだろう。日本に旅行に来て爆買いする観光客の資金源が、こんなところにも垣間見られる。

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また銀行の定期預金金利がかなり低下していることも実感できた。1年前なら1年物の定期預金は3-3.5%以上の金利が付いていたが、今は基準が2.5%程度に下がり、景気減速に伴い、さらに低下すると見られている。私が見た広告では、何とか資金を留めようと、1年物3%まで金利を付ける、という金融機関もあるようだった。ちょっと前までは考えられなかった中国の金利自由化も、確実に進んでいるようだ。それにしてもなぜ上海株に資金が流れるのか、不動産はすでに高値頭打ち、金利の低下などから見ても必然の流れのように見える。

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