広東・厦門茶旅2019(5)双髻娘山へ

5月29日(水)
双髻娘山へ

今朝も朝ごはんを求めて、古い街並みを歩く。張さんはグルメであり、グルメの周囲にはグルメの友人が集まる。彼らから様々なグルメ情報が入ってくるようで、その店を探しまくる。私は道端でお茶をすすっている老人や天秤棒で野菜を売る人などに興味を惹かれ、はぐれそうになる。

 

ようやく着いたその店は、観光客は絶対に行かないだろうと言うローカルな雰囲気。店のおばさんも『あなたたち、どこから来たの?』と聞くほど、地元民しか来ない。そこには焼き魚やつみれ、ゴーヤーなどが置かれており、好きな物を取る方式になっている。それにお粥、大腸のたっぷり入った粥は最高にうまい。これはもうしあわせに到達した域だ。私はここにずっと留まっていたいと思うようになっていた。

 

今日もまた車に乗って出かける。昨日鳳凰山へ行ってしまったのに、今日はどこへ行くのだろうか。また1時間ぐらいかけて堯平県と潮安県の境にある双髻娘山というところへ向かった。天気は小雨、そして待ち合わせ場所に責任者の劉さんが迎えに来てくれており、ここから先は細い急激な上り坂で、慣れていなければとても運転できないため、車を乗り換えて進む。生態公益林と名付けられた自然体系を守りながら、産業化していくプロジェクトのモデルになっているようだ。

 

海抜1000mのところに茶工場が作られており、ここで数年前より大学の研究と茶業を一体化させた実験的な茶が作られていた。科学的、無農薬、無化学肥料、高海抜などを売りに、茶の生産も軌道に乗ってきており、有機認定などの取り組みも行われている。これまでの鳳凰単叢をさらに進化させ、大きなブランドにしていこうという試みだと受け止めたが、果たしてどうなっていくだろうか。

 

周囲には樹齢100年を超える茶樹も植えられており、山の上に茶樹畑が広がっている。雑草がかなり生え、茶葉には蜘蛛の巣が掛かっており、その栽培法が分かる。天気が良ければ、ここを散歩していれば気持ちがよいだろう。また下までいい景色が見られるそうだが、本日はあいにくの雨。残念ながら、ほぼ視界がない状態で、景色は次回にお預けとなる。所々に大きな岩があり、そこで記念写真を撮り、足を滑らせないように注意しながら、工場に戻る。

 

そのまま車に乗り込み、下へ降りていく。堯平の街まで30分以上かかったか。そこで遅いお昼を取ることになった。自然の中で食べる、という感じで、何やら期待が持てる雰囲気だった。潮州の食は本当に期待を裏切らない。やはり地鶏の肉は歯ごたえがあり、皮がうまい。また地元で採れたイモととうもろこしを蒸かしており、これがまた甘い。既にここ数日、美味い物をたらふく食べて、お腹がパンパンなのに、頭はまた食べることを要求してくる。これって、何だか体の一部が壊れてしまったよう感覚に捕らわれる。

 

夕方宿にたどり着くと、すぐにシャワーに向かった。昨日浴びられなかったお湯、この時間なら出るのではないかと期待していたが、この期待も裏切られず、暖かいシャワーを浴びて、気分は爽快になっている。人間、お湯を浴びるとこんなにも元気になるものかと思うほど、疲れが吹っ飛んでいた。

 

夕方6時すぐには宿を出た。まだ昼ご飯を食べてから3時間ちょっとしか経っていないが、グルメの張さんにはそのようなことは関係ない。行きたい食堂が夜7時前には閉まることを知って、急いで飛び出したのだ。さすがにちょっとしか食べられないだろうと思っていたが、名物だと勧められると口にせざるを得ず、カボチャなど美味しいのでまた食べてしまう。何とここでもまた結構な量を食し、ついに腹が爆発?

 

食後、骨董屋などを冷かしながら散歩するも重たい腹は解消せず。今晩はとにかく失礼して部屋で休もうかと思っていたが、何と張さんはスタスタと茶館に入っていくではないか。『折角だから伝統的な茶館スタイルを体験しよう』ということで、テーブルに座り、お茶を淹れ始める。だが大きな舞台は暗く、茶館の出し物はまだ始まらないということで、この古い建物を散策することにした。

 

潮州は華僑の一大出生地であり、その多くが東南アジアへ移住している。その華僑と故郷を結ぶ便りや送金に関する書類が展示されているのは興味深い。この立派な洋風の建物自体が、そうした海外からの送金により建てられたものかもしれない。茶の流れについても何か資料はないかと探してみるも、何も出てこない。単叢は華僑に飲まれることはなかったのだろうか。

 

茶館の出し物は、歌と劇、そしてなぜか茶芸も入っていた。その昔の茶館で、茶を淹れることが芸になっていたとは思われず、かなり違和感はあるが、今風の分かりやすい演出だと思えばよいか。往時はもっと華やかで、やんやの喝采などもあったのだろうが、今はみな大人しく、茶をすすっている。

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