沖縄で突然茶旅2018(4)清明茶と金川紅茶

Iさんに送ってもらい、一度宿へ戻る。今度の部屋は椅子なので、先ほどまでの苦労はないが、2階から4階へ上がったため、階段を歩いて上がるのがしんどい。本当に老人のように腰を曲げて、よちよち歩いていく。少し休んでから、早目に夕飯を食べようかとまた外へ出た。夜になれば寒さが増すので、腹は減っていないがやむを得ない措置だ。

 

国際通りの方に歩いていくと、昨日閉まっていたお茶屋のことを思い出して、もう一度寄ってみた。何とお店は開いていた。そしてその扉には『清明茶あります』という嬉しいお知らせまであった。中に入ると、店主が店仕舞いしようとしていた。まさに奇跡的に出会えた感じだ。

 

さんぴん茶はピンクの紙に細長く包まれているものが、昔からの包装だという。ただ中身は中国製だと。もっと上等なさんぴん茶もあったが、こちらも中国製らしい。そして清明茶を見せてもらうと、何となく中国で昔見た珠茶のような雰囲気があった。球茶はジャスミン茶の一種であったが、この清明茶はどうだろうか。

 

店主によれば、これは台湾産だというが、今や沖縄でも清明茶を扱う小売店は2-3軒しかないらしく、どこも量が少ないため、問屋経由で購入しているらしい。『清明茶を買うお客さんはもうほとんどいない。清明茶というお茶を知っている人すら稀な状態だ』というのだから、仕方がない。昨日図書館で見た清明茶の説明は『中国茶の総称』のように書かれていたが、本当にそうなのだろうか。清明節前後のお茶と言う意味にも取り難い。

 

モヤモヤしながら外を歩く。昨日図書館で紹介された本を探しにジュンク堂へ向かう。腰は痛いが、座っているよりマシな気がして歩いていく。『しまくとぅばの課外授業』という本にさんぴん茶の由来なども書かれており、また沖縄の地名についても詳しいので、読んでみようと購入。尚ジュンク堂の2階は沖縄関連図書の宝庫だった。もし購入が必要であればまずはここを探そう。

 

ジュンク堂から宿までは意外と遠いが、ゆいレールに乗るのも何なので、ゆっくり歩いて帰る。途中街の食堂を発見したので入ってみた。何とステーキが880円だというので注文する。サラダにスープ、ご飯までついて、そこに立派な肉が登場した。店員さんはブラジル辺りの人だろうか。今日も食べ過ぎてしまったが、それは沖縄が悪い!帰り道は風が冷たいのに、なぜか心は温かかった。

 

1月12日(金)
名護へ

翌朝は更に寒かった。小雨も降り出しそうだ。腰は小康状態ながら、あまり無理できる状況にはない。外へ出ることを諦める。午前10時前、Hさんが迎えに来てくれた。今日は名護へ連れて行ってもらう。名護郊外の茶農家を訪ねるのだが、その前にランチをしようということで、名護アグリパークへ行く。

 

ここはかなり敷地が広く、地元の物産を売り、レストランもある。県のプロジェクトのようだ。沖縄には補助金が沢山出ているな、などと感じてしまう。おしゃれなレストランでランチを注文するが、やはりどことなく涼しい。ただこんな日でも宣伝のための撮影が行われており、店の人が申し訳ないと言って、こちらで採れた芋などをくれた。食事は地元やんばるで採れる旬の野菜をふんだんに使っており、優しい感じがした。

 

食後、売店に寄ってみると、沖縄産の紅茶を販売していた。よく見ると、これから訪問する予定の金川紅茶と書かれていたので、特に購入もせずにスルーしてしまった。緑茶も売っているようで、名護にはお茶の雰囲気があると感じたが、勿論土産物全体から見ればほんの少量だった。

 

車で15分も行くと、目的地の金川紅茶に着くはずだったが、なかなか見付からなかった。何とか茶工場らしき場所を発見したが、看板すらない。仕方なく電話するとその横にご自宅があり、比嘉さん親子が温かく迎え入れてくれた。ここは埼玉のTさんの紹介で訪問したが、どのようなお茶を作っているのかは正直分かっていなかった。

 

ただご挨拶をして、金川紅茶の話を聞いて、昨年の国産紅茶グランプリで第1位を取ったお茶だと思い出した。これは若い息子さんが、非常に熱心に製造法などを研究した結果生まれたものであった。彼発に冷静に物事をみているようで、1番を取ったという気負いもなく、むしろ常に上を目指すという姿勢が素晴らしかった。

 

勿論その基礎となるのは、お父さんが数十年かけて培った茶栽培であり、それはおじいさんの代まで遡る。1960年代には、台湾からの茶の輸入に対して、沖縄独自のお茶作りが奨励された様だ。沖縄復帰後は内地の緑茶需要に応えて、蒸し製緑茶を製造して、皆内地に送っていたが、その需要も細っていた。

 

午前中、数年ぶりに霰が降ったという寒さの中、暖かいお部屋で温かい紅茶を飲ませてもらい、非常に有意義な時間を過ごしたが、肝心の紅茶を購入したいと申し出ると『申し訳ないが、全て売切れ』という返事だった。それほどの産量がなく、また受賞で注目されており、品不足だった。ただ先ほどアグリパークに売っているのを思い出し、すぐに取って返して、3パックを確保した。そんなに需要があるなら、もっと作ればいいのに、と考えるのは素人だろう。品質を保つことはそれほど簡単ではない、と教えられる。

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